ラベル
ヴァイオリンやチェロの胴体の、ちょうど向かって左のf孔から中をのぞき込むと 見える位置に、その楽器の製作者のラベル(フランス語で Etiquette とも言います)が貼ってあるのをご存知でしょう。楽器にラベルを貼る習慣ができたのは16世紀にさかのぼります 。
信頼性はともかくとして、存在しているラベルでもっとも古いものはクレモナの有名なアマティ家のある人物の名前、製作年と製作場所が書いてあります。当時は演奏家や貴族がそのラベルを見てはるばる演奏家が楽器の注文にやってくるといった重要な宣伝広告の役割をしていました。Cremonaの黄金期と言われている17・8世紀には、Cremonaの著名な作家の楽器は、高い値段で取引されるようになってきました。有名なアマティやストラディヴァリやグァルネリなどもこの頃の人です。数多くの偽作品が世の中に出始めたのもこの頃でしょう。Antonio Stradivariの息子 に当たるFrancesco とOmobono も父の死後数多くの楽器に父親のラベルを貼っています。こうしたほうが、楽器が高く売れたからです。
お持ちの楽器のラベルが本物か偽物かという心配は不必要なことが多いでしょう。楽器の価値を考慮するときには、ラベルは単なる飾りの付属品くらいに考えてください。もっとも、銘器においては本物のラベルが貼ってあるに越したことはないのですが・・。
ときどき偽物のラベルが貼られていることを悪質な行為と受けとめる人もありますが、残念ながら弦楽器のラベルは食品や革製品の品質保証書ではないのです。本来ラベルは楽器の価値を左右するものではなく、弦楽器に関して完全に偽ラベルを取り締まることは不可能です。
著名な楽器には鑑定家によって証明書が付けられることがあります。しかし、鑑定家の間においても真偽の意見の分かれることもあります。ひどいのは、楽器の鑑定をする事自体を商売とし、安易に偽物の鑑定書を作製する人もいます。
どれを買ったらよいのか自信がないときは自分で楽器の善し悪しを正確に判断できるようになるまでは、とても高価な楽器には手出しせずに、材料、構造的、音響的にも完全で、そして値段も手頃でラベルも正真正銘の現代の優秀な楽器製作家によって作られた楽器で満足しておくことを私はおすすめします。
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